金木戸川〜赤木沢
2000年 8月12〜16日
参加者 小山 なかむら 松居 ゆりわさび 榎本
<はじめに>
いよいよ中上級の沢にチャレンジだ。台風到来も何とかなるだろうと考え、入渓した。
結果的には5日間雨は降らずといえる好天。ほぼ夕立はなかった。
激流の金木戸川はなかむらさん・渓の精がはじけた2日目は小山さん
3日目稜線へのフィナーレは松居さん・憧憬の赤木沢はミーコさんさん・下山の最終日は榎本がそれぞれリポートします。
8月12日(晴れ) 記 なかむら
沢経験3度目、そして趣味登正会員として今回初参加となる超初心者の私が、幸運にも金木戸川遡行に参加する事ができた。
金木戸川と言えば沢屋でなくとも「エゲツナイ」沢としてその名前を轟かせている有名かつ憧れの沢である。
一体どうなることやら。楽しみの陰に不安もちらつく往路であった。
国道471号線から双六川添いの車道を遡り、途中林道に分岐してしばらく進むと、突然車止めゲートが現れた。
ここは予定していた駐車地点よりも20km以上手前である。
地元民の噂によると一般車両によるトラブルが多発したため2年ほど前からゲート
を閉ているとのことで、やむを得ずここを駐車地点とする事となった。
予定外の長い長い林道にかなり手間取り、やっとの事で広河原に到着。
ここで気合いを入れ直し、いよいよ遡行開始だ。
広河原からしばらく旧登山道を進み、程なく金木戸川と小倉谷の出合に掛かる釣り橋に到着。
旧登山道は少し手前で左に登り分岐しているがここから先の通行は困難であるとの情報がある。
我々はこの釣り橋の袂を入渓点とした。入渓後間もなく腰程度の徒渉となる。
水流が多く危険なためザイルを張り、半ば溺れもって必死のパッチで対岸へ渡った。
初っぱなからかなり緊張した。ふと振り返って見ればまだ入渓点の釣り橋が見えているではないか。
やはり金木戸川おそるべし。ますます不安になるが、その思いを吹き飛ばすほどにこの川は美しい。
水は冷たく、そしてどこまでも透明。白い岩、緑の木々、空の青。それらのコントラストが目に突き刺さりクラクラするほどだ。
こんなに美しい川があったなんて、日本の自然もまだまだ捨てたものでは無いな、と呑気な考えが頭をよぎる。

(喜々と泳ぐ。偵察後戻るが、ここは長い泳ぎ。
顔を付けてイワナ観察しながら泳ぐとかき氷を食べたあとの時みたいに頭がキーンと来た)
美しい渓谷。言葉はない。
しかし、現実は厳しい。このあとも渓相は険しく、胸までの徒渉、泳ぎ、へつり、激流徒渉、高巻き、
攀じ登りなどなど、技のオンパレードで、それらの難所を次々に突破していくリーダーに拍手、拍手。
(右へ左への渡渉が続く)
いや、拍手しているだけでなく、自分も行かねばならぬのだ。
(スクラム渡渉を中心にしのぐ。流れは冷たくきれいだ)
日頃運動不足の私などは体中の筋肉を使い果たしてヨレヨレになりながらも前進し
、
ようやっと打込谷出合に掛かる釣り橋まで来た。本日はここで行動終了とする。
最初から最後まで緊張の連続であり、沢の難易度はかなり高いのではなかろうかと思われた。
台風による増水が懸念されるためテン場は少し小高い台地状の場所とした。明日の天気が心配だ。
2日目 記 小山
渓谷の朝は、日が射し込むのに時間がかかるのか、薄暗い夜明けである。
今日のスタートはいつもよりもゆっくり。寝不足も解消され、時間を楽しめる余裕もあった。
遡行は楽しい。ただトップの苦労は大変だと思う。ザイルを張れば、次に続く者は楽・楽。
ザイルを頼りに進めばよいのだから。上がるたびに震えがくる。しかし帰る頃には、又行きたくなる。不思議な世界だ。

しかし胸まで浸かる清流の冷たさといったら体が固まるほどである。
(今日は水への恐怖はない
美しさを享受した)
(稜線は遠い)
今日は待ちに待ったイワナ釣りの日。
遡行も順調に進み、PM2:00頃、目の前の谷も広がり、今夜のビバーク地点も決まり、リーダーより釣りOKのサインが出る。
釣り組3人は仕掛けを出し、登りつめて行く。
早速、中村君のサオに岩魚がかかり、次に榎本君からも大きい、大きい糸が切れそうと、声が聞こえる。
続いて私のサオにも掛かり、ぐいぐい引っ張られる。
びっくりする程大きいのが釣れている。あまりの大きさに「アミ、アミ」と叫ぶ声も興奮気味になる。
時間も忘れ思い思いに釣ること2時間。3人で10匹釣れ、外した岩魚も5匹と我々初心者には大漁であった。
いかにこの沢に人が入ってないか解る。

夕食は究極の御馳走となった。
刺身に、塩焼き、ムニエルと食べ方のバリエーションは広がり、最高の一言。
極めつけは骨酒。これは病みつきになる程の味であった。
(イワナにむしゃぶりつく松居氏)
(極め付きの骨酒)
清流を流れる水はエメラルド色に染まり、透き通っている。岩石は圧倒される大きさであった。
暗闇の中で焚き火を囲んだ語らい。楽しいメンバーと過ごせたことを感謝しつつ、次の沢登りを考えていた。
3日目 記 松居
金木戸川の3日目を松居から報告します。
3日目は稜線を越えて黒部側に降りる長い行程である。
前夜の興奮醒めやらぬ間に夜が明け、まずは天気に感謝。
(出発直前)
なかなか水量は落ちない
(谷は相変わらず美しい)
最初はきんちぢみと言われるポイント。岩も大きくなって来て乗っ越しを繰返すようになってきた。
ボルダリングの課題のようで楽しい。もうちょっとこの岩で遊ばせてよと言いたいのだが、今日の行程を考えるとそうもいかない。
(通称”キンチヂミ”)
キンチヂミは右から越えた。楽しく越えられる。
(キンチヂミの巨石を越える)
私は岩を乗っ越そうとルートを見るが、リーダーはへつりや泳ぎでルートを見ていてその違いがおもしろい。
(雪渓を予感させる膨大な流倒木)
そうこうしているうちに、前方に何やら白いものが見えてきた。雪渓だ。
私はどのようにルート取りするかだけ考えていたのだが、ベテランのリーダーは違っていた。
雪渓のそばはまだ春。ウドやこごみがないかと見ていたのだ。
早速こごみ発見。本当に食い意地の張ったパーティである。
(谷を雪渓が埋める)
(コゴミの収穫後、読図し突破ルートを検討する)
(雪渓下の向こうに明かりが見えるが中に小滝があって進めない
写真右手の雪渓下をくぐった)
雪渓自体は、下を一人ずつ小走りに駆け抜けた。
(何度やっても心臓に悪い)
(徐々に水量が落ちる。蓮華谷出合手前)
まもなく蓮華谷との出会い。本谷に別れを告げ蓮華谷を遡行、さらに九郎衛門谷へ入り五郎小屋の稜線を目指す。
(本谷に別れを告げ蓮華谷を行く。源流歩きの興趣)
ここの滝の高巻きがすごく悪かった。ガレと草付きを這い上がるのだが、不安定で緊張を強いられ、息が上がってしまった。今日一番の核心だった。
(九郎衛門滝)
これを越えると谷はどんどん小さくなり、気持ちの良い詰上がりで稜線の草原へ。
(あの激流が・・・)
(黒部五郎小屋は指呼の間)
ちょうど五郎のテント場の中へ出てきた。小屋でビールを仕入れて大休止。
我々の異様な格好に周囲の視線が集まる。
さて最後の行程は、五郎沢の下りである。
釣りをしたいメンバーはあっと言う間に駆け下りていった。
私は無理をせずゆっくり降りる。もう下りも飽きた頃やっと黒部本流に出た。少し本流を下って泊。
この日は釣果は上がらず、夕食はうなぎでした。(夜食は焼き芋!)
4日目 記 ミーコさん
さあ、今日は待望の赤木沢遡行です。天気は上々、気分は最高。
(好天の黒部源流。赤木沢に向かって下る)
思えば去年、黒部上廊下を遡行して、赤木沢までつなげる予定でしたが、あいにくの雨にたたられ、
薬師沢出合で遡行を打ち切り、後ろ髪を引かれながらも折立に下山してしまいました。
その思い出が鮮やかに甦ってきました。「ミーコさんさん、一年待った甲斐がありましたね。」と松居さんの声。
そういえば一年前、残念がる私に「天気の赤木沢はすばらしいから今度是非天気の時に来ましょう」と慰めて下さったことが現実のものとなって感激です。
テント場から黒部川を下降して赤木沢出合にたどり着き、太陽に弾けてきらめく水に接した時、評判通りの美渓だと思いました。
出合の釜で榎本さんと小山さんが泳いで赤木沢に取り付きました。
(下手からに巻くように赤木沢出合を堪能する良識的メンバー)
(赤木沢出合を泳ぐ榎本。美渓を汚す?水中カメラで自ら撮影)
沢は滝とナメが飽きることなく続き、しかもほとんどが流水の中を直登できて気持ちよくグングン進めます。
30mの大滝は左岸の草地を巻きましたが、昨日の九郎右衛門谷の大滝の高巻きとは天と地の差です。
(真夏のきらめき)
(天下の美渓、赤木沢)
みんな楽々とお花畑を鑑賞しながらの登りです。
食虫植物のモウセンゴケが意外にも白い可憐な花を咲かせていたり、虫取りスミレやミヤマアケボノソウがみんなの目を引いたようでした。
(水量の減少とは反比例する開放感)
大滝を過ぎてからしばらくして、本流から下山道に近い北ノ俣岳よりに進路を取り高度を上げました。黒部川からはるか遠くに見上げていた雪田の回りにはハクサンイチゲの見事な大群落がありました。今日は北ノ俣岳から神岡新道を下って北ノ俣岳避難小屋泊まりの予定です。さすがに水に浸かりっぱなしの四日間の体は疲労を覚えましたがこの下山ルートもイワショウブやミヤマリンドウ等の花々が咲き乱れ、夏の北アルプスのにぎわいが嘘のような静かないいコースでした。今回同行した新会員のK.Nさんは蝶や昆虫に詳しく、乱舞していた蝶の名前が高山蝶のベニヒカゲだと教えられ、自然に対する視野がまた一つ開けた気持ちになりました。
(疲労困憊?)
(じりじり高度を稼ぐ)
(黒部の強烈な一発。こんな開放感は・・・)
(ようやく稜線だ)
(北俣避難小屋に向かって下る)
避難小屋での夕食は小屋が狭いので外でタープを張って食べましたが、これが入渓してから四日目の夕食かと思うほどの豪華さで、
次回からはもう少し重量を減らさねばという声が出るほどでした。
今日赤木沢の取り付きで榎本さんが泳いでいたのを目撃された方が彼の事をガイドと思ったそうでした。
なるほど、そう思える程、彼はリーダーとしてこの困難な山行を先頭に立ってこなして下さったと思います。
もちろん他のメンバーもそれぞれに力量があり、危険な所ではずいぶん私に手を貸して下さいました。
そのお陰でこの厳しくもすばらしい山行のフィナーレをなんとか無事に迎えられたそうだと感謝しながら、小屋での就寝となりました。
5日目(最終日)ガスのち晴れ 記 榎本
小屋では眠れない体となってしまったのか。
寝返りもうてない混雑した小さな小屋に閉口する。
暗いうちに小屋を出て朝食の準備をする。
まるで入山初日のごときたくさんの具がフライパンの上で踊ってる。
朝っぱらからジャージャー炒めているのは私たちのパーティーだけだが、満ち足りた朝食だった。
朝靄の中の下山。相変わらずのお花畑。
すがすがしい平坦な道だったが、すぐに下りになる。
水芭蕉が大きくなり、清楚さのかけらもなく、話題を提供してくれた。
が、すぐに「湿地に生えるはず水芭蕉がどうして尾根に」ということになる。
憎まれ役の水芭蕉である。尾根なのに足元はぬかるんだ湿地と変わらない。
この数日雨はないはず。足を取られながらも急な尾根を下る。
途中、鶴の舞に見立てたマイヅルソウを教えられる。命名者の感性に感じ入る。
高度の低下と反比例して気温が上がり、もう嫌になるころに車道が見え、有峰湖が遠望された。
なかむらさんの携帯でタクシー会社に何度も連絡を試みたもののアンテナは立たず。
ヒッチハイクでY.Mさんがタクシーを拾いに行く。入浴後、帰途についた。
(有峰湖を見下ろす)
<振り返って>
皆さんご苦労様でした。印象に残る山行とは苦労した山行だとはよく言われます。
しかし、完成度の高い山行も非常に印象に残ることが今回わかりました。
毎日それぞれメインディッシュがあったような気分です。遡行図を書くことを忘れて全身で感じた金木戸川。
念願の赤木沢出合でのスイミング(?)。やはり黒部の水は冷たい。
こんな山行ができたのも本当に皆さんのおかげです。
だまされていると気づかずついてきたなかむらさん。今後もだまされ(?)続けて下さい。
骨酒はいいですね。小山さんの口をつきだして近づけた仕草、忘れられません。また焚き火でイワナをゆっくり焼き枯らしましょう。
沢登りの華は何といっても滝登りですよね。たまには華を持たせて下さい、松居さん。
でも、あごを引き、上目遣いでルートを見入る松居さんも素敵だなぁ。
赤木沢から稜線に詰め出た時に見せたほっとした笑みは忘れられません、ミーコさん。
執念を実らせたのかなぁ。それとも赤木沢への想いが勝ってたのかな。
ほんとほんと、みんな最高だぁ。山も人も。こんな山行またしたい。
コース
金木戸川(沢中2泊)〜黒部乗越〜五郎沢〜黒部川源流(1泊)〜赤木沢〜北ノ俣岳〜神岡新道(1泊)〜飛越新道〜飛越トンネル
コースタイムは各日8〜9時間
○天候 全日晴れ一時曇り
○水量 +5cmから―10cmへと日を追う毎に減水。
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