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白山 大白川アワラ谷右俣〜稜線の池塘〜アワラ谷左岸支流
■2004年6月19〜20日
■L浅野賢一・榎本成志(記録)
昨年、私が膝を痛めて中退したアワラ谷左岸支流を含めた山行。狙いは池塘で、アプローチの沢はガレ沢だと決めつけて見向きもしてなかったが、アワラ谷右俣はツメの450mは滝がぎっしりつまり、ほとんどが直登できる快適な雪国の1本。取水口の乗り越えで苦労するなら連瀑帯の突破は時間がかかると考えたい。アワラ谷左岸支流も険隘のゴルジュに15m直瀑をかけるピリッとした雪国の渓ではあるが右俣に比すると小粒。双方とも冗長なゴーロ歩きがあるのが惜しまれる。
浅野チーフの山行後の感想を付記しておきます。「全て予定どおり。そして想像以上の成果でした。雪渓処理も、偉大なスパイスとなりました。私の会心の山行が一つ増えました。若い人が同行してれば、・・・・・。これを逃したのは、3年分の経験を逃したのと同価値と言うのは、ちょっと大袈裟か?」
足を引きずった去年の記憶が甦る。水温は思ったほど低くない。アワラ谷左俣出合を越え、上物をウドを収穫。下ってきた釣り師二人に、先は雪渓で埋まっていることを聞かされる。釣り師に遡行を止められる心配は杞憂となった。すぐに取水口堰堤に着く。正面コーナーをスメア気味で突破。その先はぎっしりと雪渓に埋められている。雪渓先端まで近づく勇気はなく、滝の正面まで回り込めなかったが、横顔は流れの太いなかなかの8m直瀑。右岸から小さく巻いて降りる。
8m滝
人の踏み跡を感じたのはここまで。お互い「初登」とは言わず、「記録未見の沢」と言っていたのは、「こんな沢に誰が入ろうか、つまらないガレ沢だ」という気持ちも基底にあるからでは。8m滝を越えた後、ゴーロをすぐに雪渓が谷を埋める。高い壁を左に見て、右に折れ曲がると雪国らしい沢に。取り付けない側壁と磨き込まれた小滝。次のザイルを使えば登れそうな12m滝は左岸を巻く。

雪国らしくなってきたゾ
なかなかの12m滝
まもなく現れた左俣は、険谷を思わせる高い側壁を擁して天空の下にあった。右俣より食指を動かしたくなるが、右俣の上に目的の池塘がある。ガレ気味の沢に入っていく。いくつかの小滝と雪渓を越えた後、雪渓向こうに右から6mぐらいの直瀑落ちていた。
時折谷を埋める雪渓
草付き名人の浅野さんが雪渓からサックと小さく巻くのをバタバタと追いかける。滝の落ち口に先に降り立った浅野さんが「お〜、これは」と珍しく大きな声。降りきるのがもどかしい。そこには、見え始めた初夏の青空から降り注いでくる連段の滝があった。20mにはなる連段。微妙なフリクションで抜けたり、右を巻いたり、流れ脇を直登したりと、それぞれが思い思いに雪国の滝を楽しんだ。実はここからがこの沢の白眉。18mを筆頭に直登できる滝ばかりが次々と目の前に表れる。標高450mを息つく間もなく滝に無駄なく導かれていく。下田山塊を思わせるようなスラブが出てきたりして一層気分を盛り上げてくれる。
6m滝
手前の雪渓がなければ右岸から登れた気がする
連瀑帯の始まりだ
フリーで直登できるものばかり


うまそうなウルイだ
こんな沢が手垢が付かず残っていたとは。いつしか自嘲気味の「記録未見」から「初登」へと高揚してきた。頃合いのウルイを収穫後、左右の草付きも稜線近くの雰囲気になってきた頃、同定しきれないユキザサも多数収穫(浅野さんが図鑑で確認。ユキザサだった。うまい!!)。
ユキザサ
稜線が近くなったのか・・・

150mぐらいの長めの雪渓に新しい熊の糞とおぼしきものを見る。緑の繊維質がふんだんに残った妙に初々しいものだった。稜線泊に備えて水を汲む。雪渓を越える度に斜度がきつくなってきた。ツメに近いのだろう。まだスプーンカットのできてない雪渓をこわごわ登っていく。最後の雪渓で私がスリップ。10mほど滑落し、雪渓から飛び出てて停止。滑り出したら止まらないことを実感と同時に技術の未熟さも思い知らされた。10分程度の軽めのヤブコギですっきりと稜線に出た。笹をかき分け、目的の池塘を目指して少し下がると、背丈よりやや低めの笹の向こうに長年地図で眺めた池塘が水をたたえている。灌木と笹に囲まれたひっそりとした池でしばらくたたずんだ後、もう2つの池に向かった。
あれは!
着いた!
こんな大きさとは
点在する雪田
まだ先は長いなあ
白山の沢はさすがに登れそうもない
大きさは地形図上で5mmはあり、かなりのものが期待されるのだ。稜線のヤブは思ったほどではなく、雪田や最近まで雪に押しつけられて這いつくばった笹が要所要所に出てきてヤブコギを軽いものにしてくれた。ただ稜線にはうるさいハエ・ブヨが我が物顔に飛び交っており、これには閉口。休憩は言うに及ばず、ヤブコギ中も動きが鈍かろうものならたちまち肌の露出部分に急降下してくる。休憩でヘルメットを外した頭に、髪の毛があるのに頭皮をブスブスやられた。私は体質的にブヨに弱く、拾いものの沢と一つ目の池で満ち足りていたのも手伝って、沢に降りたくなっていた。ブヨはたまらん・・・。だが、突き進む浅野さんに引っ張られてヤブをこぎ続けた。3時間近くヤブと戯れただろうか、ようやく静まりかえった森の中、ひっそりと横たわる池を眼下に捉えることができた。思わず声をかけそうになったが、気付くのを待った。浅野さんが「まだ着かんな、まったく」という所在なさそうな歩きで池の見える方に近づき、はっとした視線をこちらに向けてきた。その視線に親指を立てて答えた。大きく息を吸うと高山帯特有のやわらかな針葉樹の香りが鼻腔に満たされていく。斜面を下った先の池はやはり静かだった。

水面に映る木々にしばらく目を奪われる。羽虫が水面にわずかな波紋を起こしている。梅雨の最中でも雪田がもたらす稜線の池。一般登山道からもはるかに離れ、めぼしいピークさえないこの山域を訪れた人は過去何人いるのだろうか。この稜線を通る者なら恐らく池まで降りてくるはず。池のまわりは人の踏み込んだ跡は確認できなかった。ブヨに追い立てられるように稜線側の斜面をトラバースし、隣にあるはずの池に向かう。稜線と平行に細長く伸びる池のそばを伝い、池に倒れている木に乗って渡りきった。

稜線にこんな大きな池があるのか。豪雪がもたらすものは谷の厳しさだけではないのだ。森に入り、窪地の残雪に導かれるように隣の小さめの池に出た。大きさと美しさは比例するものではない。もっとも円形に近く、木々を水面に映している。湿っぽくはあるが泊まれる広がりを持つ開放感と秘めた雰囲気を併せ持つ池。今回の中で一番のお気に入りとなった。みぎわの草には申し訳ないが、幕場はここ以外に考えられなかった。

残雪にビールを突っ込み、夕餉に取りかかる。ウドはマヨネーズと酢みそで生のまま。やみつきの定番だ。ウルイは朝のうどん用に確保。夕食を取り終える頃、雨が降り出す。あわててツエルトの中に逃げ込む。付いて入った蚊を撃退して、ゆっくり飲み始める。天気予報では雨は明日の午後からのはずなのに。22時就寝。
起床時間は5時。一晩中雨とは知らず朝までいぎたなく眠り続けたが、4時半ぐらいから寝ては覚めてを繰り返していた。かなり降ったそうだ。沢に幕場を求めていたら眠り惚けることができたかどうか。ウルイ・コゴミうどんを食して出発。名残惜しい池から鞍部に上がり、下降を始める。
振り返ると池があった
去年中退した因縁の沢。ヤブもほとんどなく、すぐに流水が出た。下降し続けると、雪渓が徐々に出始める。特に大きな滝もなく順調に歩みを進める。「昨日の沢が特別で、やっぱり何もない沢なんかなあ」との思いがよぎった頃、足元の流れが消えて左に90度に曲がっていた。目の前は高い高い側壁。15mぐらいの滝をかけた先は幅3〜4mとも感じられるほどの狭いゴルジュ。昼なお暗く陰惨な雰囲気をかもしている。切れ切れの雪渓が谷を埋めている。左岸を巻くしかないが、とりあえず右岸の樹木の生えているリッジに上がって様子を見ようということに。う〜ん、やはりズタズタだ。高いところで見た方が状況が一層わかるので、今後とも面倒がらないで見ることにしたい。
リッジからの15m滝
写真中央の浅野さんはさて何を?
高巻きを終えて上部を見る
足下の雪渓に乗ったら?
舌端がバサッと落ちた(^^;
さて、元の流れに降りようとしたら、浅野さんは猫の額のような所でキジを撃っていくとのこと。狭い流れの上でされるのは確かにかなわないが、バランス崩せば20m下に尻をむいたままサヨウナラ。身軽になった浅野さんを待って左岸の巻きにかかる。20mぐらい上がったところのバンドに導かれていく。もう頃合いかと沢筋近くまで降りるが、まだズタズタの雪渓の中。再び巻きにかかる。バンドに獣の踏み跡を感じていたのは私だけだったか。ガレたルンゼを先行する浅野さんが偵察で先に下る。「とりあえず、降りてきて」との声がかかる。私は「とりあえず?」と怪訝な気持ちになりながらも、状況に好転の兆しがあるのだろうと降りて行く。「どうやら問題なさそう」との言葉。切れている次の雪渓に上手く乗れそうだ。沢の上部を見ると屈曲したゴルジュの出口はやはりズタズタの雪渓。浅野さんが15mぐらいの上部雪渓にゆっくり乗った途端、雪渓末端2mが音を立てて落ちた。10m以上離れていても震動が伝わるということを知る。そこからは大した悪場もなく下っていく。ただ結構の高さの滝もクライムダウンをした。もっとも今回みたいにロープを出さないのは初めてのこと。50mザイルはもとより、お助けさえも3度という状態だった。私が弱気になると浅野さんが、浅野さんが弱気になると私がと、お互いに引っ張り合った面も多大だろう。
クライムダウンの連続
左岸支流もなかなかの沢ですね
木肌の中央に熊の爪痕
これは巻きました
ジェードル状15m
なんだありゃ?
去年の記憶を感じられる所まで下ってきて、雪渓の数も少なくって来た頃、谷を埋め尽くす大きな雪渓が出てきた。分厚くて向こうも見通せるため、今回初の雪渓くぐりとなった。慎重にかつ足早に歩みを進める。慣れたくもないが、雪渓くぐりは何度やっても慣れることはなさそうだ。
呼吸する雪渓
走り抜ける

やっぱり白山の雪はすごいんですね
そこからまもなく本流に出た。あとはゴーロを下って行動終了。平瀬のいつもの温泉で汗を流した。
行動時間1日目 約10時間半
2日目 約5時間
山行情報
○寡雪の今年でこの雪の量ということは例年6月は遡行の対象になりそうもない
○別山から白山本峰はまだまったく遡行の対象にはならない雪の量
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