戻る  トップページへ  


■2004年10月16〜17日
■白山 境川フカバラ谷
■近藤・榎本

 白山を代表する名渓という呼び声は笈ヶ岳直登沢を分けてから発揮。そそり立つゴルジュにかける雪国の滝と泥付きを越えて草に頼る高巻き。晴れの日を選んで入渓したい。それにしてもこの渓を一日で抜ける人がいるとは。

私の仕事の都合で出発が遅くなり、白川村の道の駅に着いたのは2時過ぎ。一部の建物は24時間自由に入れ、シュラフを広げてゆっくり寝られるお勧めスポットだ。安着祝いのビールをもう一本と近藤さんに勧められて、明日の遅立ちが決まった。明け方に押し掛けてきた熟年ハイカーが一層睡眠不足を助長する。起床後、境川入渓点に移動。初々しい雪化粧の笈ヶ岳に驚く。この秋の週末、お目にかかれなかった一点の雲のない青空の下、しばらくはゴーロを歩く。


次第に左右が狭まり、20mはあろう側壁を擁したゴルジュをほめそやす歓声が叫声となるのはすぐだった。文字通り腰上の渡渉にシビレル。
つべたい!!気力もナニも縮んでしまう
2時間10分でボージョ谷出合。有数の難渓と聞くが、噂に違わぬ入り口。除いてみたいモンだ。
ブナハリタケです。今夜のおみそ汁の具にいただきました

すんばらしい天気

ト谷出合?

フカバラ谷入り口


さあぁ〜行くゾ
スラブのト谷出合を過ぎ、うっかり笈ヶ岳直登沢右俣に入り込むがまもなく水が涸れ、間違えに気付く。戻ってフカバラ谷出合を見つける。フカバラ谷のゴルジュの入り口は20m以上のゴルジュの暗峡。奥に5mほどの嫌らしそうな滝をかけているがシャワーを覚悟すれば越えられそう。階段状の5mに向かう。中央突破は優しそう。合羽を着込み、フードをかぶってザックを背負ったまま不用意に取り付くが、覚悟すればしのげるシャワーなんて甘いモンじゃなかった。カッパの上からとはいえ、頭から瀑水を浴びた途端になる過呼吸。根性なしの私は水流をできるだけ避けるやや厳しめのラインを選された。逃れようもないゴルジュの瀑水。あっちこっちと逡巡している内に時間切れ。ウルトラマン同様3分なのだ。バランスを崩し2mほど滑り落ちるがザックのせいにする。身軽になって再チャレンジ。「10月半ばに全身シャワークライムなんて我ながらよーやる」と瀑水にうたれながら、ガバをまさぐるが、3分ウルトラマンと自覚できなかったのがミスか、水流中の見えないホールドが本当は甘いのか、冷え切った指先では結果は同じだった。ガバだろうと思い込んだホールドにあっさり見放される。ザックを置いているものだから先ほどより果敢に攻めていたのも不幸。登るアホウは先ほどより高く、4mを階段状の滝と瀑水にもまれながら近藤さんの叫声と共にドスんにドポン。ノービレーの非は受けなければいけないが、あのシャワーの中、リス探しにハーケン打ちは考えられなかった。「そんなら登るな」と言うことであろうが、登れそうと見通した私の甘さは大いに反省するところ。負け惜しみを言えば連続する台風で水量も多かった、ということにしておこう。大したケガはないと感じていたが実は結構な突き指をしていたのが後刻分かった。山行後10日経つ今も痛みが残る。さてあまりの寒さでよたりながらゴルジュを戻る。死後硬直ではないが、体がガチガチに固まり、一歩進めるだけで足がつる。何とか陽の当たるところで人心地を着ける。行動食をほおばり、ほんの少しだけ少しほっこり。おとなしく左岸を高巻く。落ち着いたように感じていたが、所詮冷え切った体で刻むステップは華麗とは無縁。ジタバタと登る固い動きは恐怖を助長させることを再確認。近藤さんのナイスな高巻くを必死で追う。巻き続けるかで悩むが、とりあえず降りてみることに。結果的にはこの下降は大正解。フカバラ谷の白眉はここからだった。11mのホールドいっぱいの滝。滑落のトラウマを消し去るため、突破を選択。若干の逆層もあるが、まあ行けそう。今度は丁寧にランニングを取る。近藤さんを引っ張り上げて、上を見ると、ゴルジュに詰まった威圧感たっぷりの吹き出す滝が2つ。一つ目6mは右岸トラバース後、左コーナーを抜ける。25mの大きな滝も右岸から高巻く。出だしの巻きもなかなか。ぐずぐずのザレ場をヤワな草を頼り切り、灌木懸垂で高度を上げる。目星をつけていたはずのバンドは弱気になってパス。木々の連なる大巻きを選択するが、ミスに気付き、下がって、ジャスト落ち口に。やはり最初に見当をつけたバンドが正解だった。まだまだ冷静さを欠いていたのだろう、いつもの自分ならしないミスのはず。さて巻き降りた先は身構えざるをえないゴルジュ。大抵のゴルジュは幕場の1つも見いだせるものなのだが、断念せざるをえない狭さ。時間も16時も過ぎていた。とぎれることのないゴルジュの回廊を地図はご丁寧に教えてくれている。どうやらドツボにはまったらしい。極力水に浸かるのを避けながら釜や滝をトラバースしていく。時折、近藤さんも躊躇するほどの滝場をトップ後退で登っていく。近藤さんは登る力を鍛えねばとしきりに思案顔。室内の成果ですよと室内詣でをそそのかす私。調子の出てきた頃、猫の額のような砂地を見つける。もう少し上そそり立つ滝を確認して戻る。他の幕場は望むべくもなく、天気予報を信じて夜の準備にとりかかる。少し苦労した焚き火に酒で心地よくなる頃ツエルトに潜り込んだ。
10月中旬に白山の瀑水をもろに・・・

毛虫マークの地形図の中には文字通りのゴルジュ

  スバラシイの一言につきるゴルジュ

    


翌朝、前日とは全く違うガスの中。朝食を終え、出発する頃には前日の快晴が戻ってきた。ゴルジュ最後の関門といわんばかりの18m直瀑。側壁はそそり立つゴルジュ。やや低めと思われた左岸のルンゼから巻き上がる。登るにつれ、ホールド・スタンスとも甘くなる。点々した灌木とスラブに乗る草と泥。滑ったら間違いなくサヨナラだ。近藤さんに「ザイル出しましょうか」と確認すれば、飄々といつもの調子で「う〜ん、大丈夫ですよー」と返ってくる。自信はあるけど私も結構恐いのだ。躊躇する場合「ザイルは迷わず出せ」であるが、2歩程度毎に少し安心感の持てるホールドが目につくが、それをつなぐホールドはスラブの割れ目に生える草付き。草の根元近くをソフトにつかむ登り。心臓に悪い。「せんに限るなあ」と思うが、見上げると風になびく草付きの美しいスラブが和ませてくれる?。結局フリーで越えたが思い返せば少々冷や汗もの。さて、安心できる樹林帯に上がり、低くつないでトラバースといっても、50m近くは以上巻き上がった感じ。樹林を拾って落ち口近くの右の枝沢に降りる。本流へは3mの嫌らしいスラブ。素直に懸垂を選ぶが、灌木伝いで巻けたようだった。残念無念。さて、緩むように見えた側壁からゴルジュも終わりか〜と思いきや、フカバラ谷がそんな甘い顔を見せてくれるはずはなく、すぐ隘路にたたき込まれる。最後の連段は手が出せない。突破するなら人工か、フリーの突破は私には無理。右岸高巻きに入っていた近藤さんを追う。ところが樹林に着くまでがこれもいやらしい。2〜3ほど根元のぐらつく細い灌木を頼り切りながら、強引に体をずりあげる。安心できる樹林帯に入るがじっと我慢の子のトラバースを続けて巻き降りる。いきなりゴルジュが後退し、広々とした源頭の雰囲気になる。青い空に、色づき始める木々。景色を味わう余裕も出る。しばらく行くとナメコの付いた大木。今年の初ナメコはもちろん頂いた。ムキタケのおまけ付きで満面の笑み。
ナメコですぞ!!

2日目のゴルジュ

手強い滝が続く
フカバラ谷の核心突破とナメコ収穫の両手に花で意気揚々と大笠山ピークを目指す。
新雪の名残
あーだこーだと読図しながら抜け出た稜線は大笠山ピークから20mの地点。なかなかの読図と満足させて、頂上で靴を履き替え、下山にかかる。それにしても下山の長かったこと。最後の30分は先行する近藤さんを追うので必死。到着後、近藤さん曰く、「走らなければ滑りそうだった」と・・・??。私から見れば「走ったらよけいにすべるんちゃうの」であるが結果的には早く着けたのでよしとしよう。平瀬の温泉で入浴後、帰路についた。近藤さんは山行後、今年1,2を争ういい沢だったと称賛していた。
冠雪する白山本峰

行動時間
1日目 約9時間(桂湖―ゴルジュ中間点)
2日目 約8時間半(ゴルジュ中間点―大笠山―桂湖)

遡行情報
○ゴルジュ内での幕場は少ない
○フカバラ谷に入って少しの25m滝の高巻きでザイルを出すなら全体的に時間がかかると見た方がいい

メール  トップ 遡行した沢

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送